子供が歯科医院に行きたがらない
お子さんが急に「歯が痛い、痛いよぉ」と泣きはじめたらどうしますか?
痛み止めの薬を飲ませても、その場しのぎだし、ひざこぞうのすりむき傷とちがって、虫歯は自然には治りません。
でも、以前に一度歯科医院に行った時大暴れして、連れて行くのもかわいそうだ、という場合。
でも、もっと虫歯が深くなってもっと痛くなったら、もっとかわいそうなことになってしまいます。
どうか、歯科医院に連れてきてあげてください。

ただし、その時、「ぜったい痛くないから」とか「みてもらうだけだから」という言葉は、極力使わないようにしてください。

「はいしゃさんに僕を連れて行くときだけは、お母さんはウソつきになる」
「みるだけって言ったのに、痛くないって言ったのに、お母さんも、はいしゃさんもグルになってウソをついた」

お子さんが、そう思ってしまったらたいへんです。
そして、ますます歯科に、そして歯科医院に連れて行こうとする時のお母さんに、ものすごい恐怖をもってしまうのです。
医療は「信頼関係」がなければ、決して成立しません。それは、大人でも子供でも全く同じです。     

子供は、信頼している親がウソをつくような異常事態には非常に敏感です。
ウソをつかず、本当のことを説明する。
ほんの少しでも進歩があったら、心から褒めてあげる。
泣いたことに関しては叱らない。
痛かっただろうに、がんばったね、と抱きしめてあげてください。
どんな子でも、必ず、治療できるようになります。

特に、以前ろくに説明もされずに、ただ機械的にひどく押さえつけられて治療された小児は、肉体的な痛み以上に精神的な心の傷を負っています。

そういう悲しい思いを絶対にさせたくない。
初診のときには号泣していた子が、にこにこして治療できるようになったとき、スタッフみんなが嬉しくて嬉しくて涙ぐんでしまうこともままあります。

「むしばをやっつけるときは、ちょっと痛いかもしれないけど、がんばろう」
「今日はほんとうに頑張ったねっ。偉いぞっ、この次もがんばろうね」
お父さんお母さんが、こう言って連れてきてくだされば、大丈夫!

蛇足ですが、子供を叱るとき「言うこと聞かないと、歯医者さん行って歯を削ってもらうよ。」とか「泣きやまないと、注射してもらうよ」というような「脅迫めいたしつけ」の仕方は、絶対にやめて下さいね。これをやられると、実際歯医者に来たとき最初から怖がってしまい、治療になかなか入っていけないケースが多いです。子供は想像力が豊かですから、毎日のようにそうやって叱られていると、初めて見る歯医者さんの顔が鬼のように見えちゃうかもしれません。 



 要点をまとめると、以下のようになります。

毎日歯を磨いてあげて、口の中を他の人に触られることに慣れさせておく。
自分自身の恐怖感をお子さんの前で言わないようにする。
歯科治療を刑罰やおどしの手段に用いない。
今日は見てもらうだけ、絶対痛くないなどという嘘の約束はしない。
治療中の態度についてあとから笑ったり叱ったりしない。
上手にできたときは治療後にはオーバーなぐらいに家族全員でほめてあげる。
定期的に歯科検診を受け、歯が痛くなる前に治療を受けさせる。

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